「なぜ、日本ではUberが使えないのか」
最先端のビジネスモデルと企業の変革を経験してきた夏野さんは、スマートフォンとクラウドサービスを活用したライドシェアサービスのUberを通して、ひとつの考察を投げかける。
「たぶん、ホントの意味でUberを知っている日本人は少ないと思うんですよ。
だから、まずホントのUberがどういうものか、知ってもらう必要があるんです」
夏野さんの語るホントのUberとは、どういうことなのか。
「ちょうど、僕は8月に2週間ほどプライベートで家族と、アメリカに滞在してきたんです。
2週間も滞在していると、けっこう向こうの生活に染まっちゃうんですよ。割と、アメリカ人の日常生活みたいなことをして暮らしてたんです」
「アメリカの片田舎というかリゾート地にも行ってきたんですが、なにしろUber呼べば、5分以内に必ず来る。下手すれば、1分2分で来ちゃうんですよ。
だから、普通のタクシーをつかまえるよりも早いスピードでUberが来る。それも、ホントのUber。いわゆる専用のハイヤーではなくて、普通の人が運転している相乗りのUberや、車種やグレードも選べたりするんです。
つまりホントのUberは、いろんな選択肢があって、少しずつ値段が違う車を好きに選べて、すぐに来るんですね。
日本にやってきたUberは、そんなライドシェアサービスではなく、ハイヤー会社やタクシー会社が運営している配車サービスって感じですね」
「そしてアメリカでは、アミューズメント施設やミュージアムに行っても、チケットは簡単にスマホ決済でで買えて、そのままスマホに入っちゃうんでチケットレスなんですよ。例えば、自然史博物館ですけども、こんな風にチケットがスマホ入ってます」
(夏野さんは、アメリカで購入した電子チケットを手にとってみせた)
(Uberやスマートフォンでの決済をアメリカ滞在で日常的に使う夏野さんは、日本とアメリカの違いに対して、次のような印象を抱きます)
「なんかね、あれ、俺ってもしかして、テクノロジーのない国から来た人?と感じてしまうんですね。
しかし、しかしですよ、
このチケットとかクレジットカードのおサイフケータイとか、それから、そもそも携帯電話でインターネットとか、Wi-Fiスポットだって、全部日本の方が密度も濃いし、時代も早くから整備されていたはずなのに、その日本でホントのUberは利用できないし、Free Wi-Fiは必ずパスワードがついてまわる」
(そこで夏野さんは、ある疑問を投げかける)
「テクノロジーとして整備されたおサイフケータイも、当然のことながらスマホにも引き継がれて、Apple Payはおサイフケータイのネットワークに乗っかったから、日本でこんなに使われているわけですよ。
でも、使えるお店は、かなり広まったとはいえ、(アメリカに比べたら)まだまだ少ない。
なんじゃこりゃ、って感じなんですよ。
何が言いたいかっていうと。
テクノロジーとしてUberを説明しようと思えばできる。
テクノロジーとしてのキャッシュレス決済なんて、いくらでもできる。
なのに、結局我々は利用者側の意識をまったく変えないで、この20年間を生きてきてしまった」
(変革を怠ってきた日本を夏野さんは、Uberを通して感じる)
「どんなに、素晴らしいテクノロジーがそこにあっても、利用者側の意識を変えないまま来てしまったら、結局、なんにもコトは成らない。
それを、たったひとつ、ホントのUberが日本で使えないことが、証明しちゃってるんです。
日本のUberが使えないというのは、何十年も前に作られた白タク規制という法律にひっかかっていて、それでホントのUberは(日本で)認められていないんだけれども。
このUberが認められていないということは、何十年も前に決めたルールが、この新しいテクノロジーがわんさか出てきている時代に、まだ変えられていなくて、既得権を守る人たちが新しいテクノロジーでみんなが便利になる社会を阻害しているんです」
日本人が知らない「ホントのUber」を通して、古いやり方にこだわり、新しいテクノロジーを活かせない日本の現状を指摘する夏野さんは、さらに「なぜ、日本のFree Wi-Fiはパスワードがいるのか」と、疑問を畳み掛けます。
続きは次回のコラムをお楽しみに。