全2回 「すごいIT部門」を見よ~IT部門不要論に反論する~②
《連載:第2回》 社内でIT部門の存在感を向上させる方法
前回は「IT部門不要論こそ不要である」という宣言とともに、あるベンチャー企業の「すごいIT部門」を紹介しました。今回は引き続き大企業のIT部門事例と、過小評価されがちなIT部門のプレゼンス(存在感)向上のための方法を紹介していきます。 全2回「すごいIT部門」を見よ~IT部門不要論に反論する~ 《連載:第1回》 「IT部門不要論」こそ不要だ

能動的に課題解決に取り組む大企業のIT部門

「保守的」「腰が重い」などと言われることの多い大企業ですが、当然ながらすべての企業に当てはまるわけではありません。IT部門においても、ルーティーン業務をこなすだけでなく、ユーザー目線でクリエイティブな取り組みをしているケースもあります。 そのひとつが、株式会社西武ホールディングスの情報システム部です。鉄道/ホテル・レジャー/不動産などのビジネスを展開する西武グループの事業を統括する企業で、グループで利用する情報システムやITシステム基盤を取りまとめています。 その情報システム部門の課題が業務の非効率性でした。グループ企業からの基幹システムの運用に対する問い合わせや作業申請、データ直接修正といった案件管理業務の件数は、1カ月で200件近く。それを紙ベースで運用していたのです。そこで解決策として導入したのが、ITILベースのクラウド型ITマネジメントツールでした。 ITマネジメントツールとは、業務システムをデジタルで一元化・共有化して管理できるITツールです。申請のための紙とハンコは不要。案件の進捗をタイムリーに見える化できるので、やりとりやチェックの回数を減少させることもできます。ちなみに同社がITILベースのものを選んだのは、自社基準で作り込み過ぎることもなく、業務システムをシンプルに標準化でき、ベストプラクティスも導入でいるからとのことです。 導入の結果、案件対応のスピードは圧倒的に向上。ユーザー(業務部門やグループ企業など)からも申請業務に要する時間を大幅に削減できたこと、プロセスのシステム化によって効率化されたこと、見える化によってコミュニケーション効率が向上したことを評価されており、社内に与えたインパクトの大きさがうかがえます。 IT部門のミッションは、企業によっても時期によっても異なります。近年は利益に直結する「攻め」の施策を求められることが多くなっていますが、かといって、何でもかんでも攻めれば良いわけではありません。自社の課題解決に当事者意識を持って対応すること、それによって企業全体の生産性向上を図ることも、貢献度の高い重要な任務のはずです。

社内でのアピールと信頼感の醸成も重要

また、コロナ禍で多くの企業が事業継続戦略(BCP)を最優先事項にしている現在、コスト削減施策も重要度の高い取り組みと言えるでしょう。 そのためには既存システムの見直しはもちろん、ITベンダーとの関係性の見直しも効果的です。情報システム開発を発注しているベンダーへの費用の算定を工数ベースから成果ベースへ切り替えている企業もありますし、常駐しているエンジニアに在宅やリモートでの作業を依頼して、オフィススペースの削減を検討している企業もあるようです。 ただし、コスト削減自体が目的となってしまっては本末転倒です。ビジネスでは、投資を最小化しながらも、常に効果最大化を図る視点が求められます。例えば削減したコストを、コロナ禍の長期化を見越して、デジタルトランスフォーメーション(DX)のスモールスタートに投資するといった戦略も必要というわけです。 そして戦略が策定したら、目標を定量化してKPIを設定し、定期的な効果検証をもとに改善を重ねていくこと。そして、その取り組みや成果をミーティングなどの場で経営層や他部門にアピールすることも大切です。ただでさえIT部門の活動は他部門から見えづらいと言われていますし、何よりこうした積極的な姿勢は、IT部門の社内でのプレゼンス向上にもつながるからです。 プレゼンス向上という点では、専門家として常に知識をアップデートし続けることも重要です。業務やITに関する知識以外にも、コンプライアンスやマーケティング、労務管理、経営などについての知識も身に付ければ、活躍できる範囲も広がるはずです。 IT部門の業務は自社内で完結することが多いため、どうしても視野が狭くなってしまう傾向にあります。ですので、時にはセミナーや勉強会に参加して、社外に情報を取りにいくのも良いでしょう。同業者と交流することで刺激も受けますし、思わぬかたちで担当案件の解決策が見つかることもあるからです。 そしてベストなのが、得た知識や情報を部署の垣根を越えて社内で共有すること。方法はメールでも社内報でもナレッジ共有ツールでも構いません。何より、業務以外でも協力的な姿勢を見せることが信頼感につながります。面倒かもしれませんが、こうした細かいことを続けていけば、IT部門が人事や経理のように企業にとって当たり前の存在として認識される未来も遠くないはずです。的外れの不要論なんかに負けず、がんばりましょう!

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2020-11-24

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