《連載:第2回》 様々なサブスクリプションサービスが、AI導入のハードルを下げる
AI(人工知能)への関心が高まり、提供できる知能や知見のレベルの差はあれども、機械学習の仕組みを採用した製品は数多く登場してきています。ここでは、最近聞かれるようになった活用例、そして今AIを取り組みやすくなった背景に触れてみます。
全2回 「現実解」としてのAI活用の今
《第1回》「幻滅期」に入ったAI、いま知っておくべきこととは
徐々に広がるAIの活用事例
前項で述べたように現在のAIはまだまだ限定的で、さまざまな制限・制約があるのですが、一方で着実に実用化が進んでいます。
たとえば製造業における品質検査もその1つです。すでに多くの製造現場では、サイズや温度、圧力などのセンサーデータをもとに品質チェックを行う検査装置が導入されています。しかし、これらの装置で検査できる範囲は非常に小さく、対象とする製品も限られてしまいます。こうした理由から、いまだに多くの品質検査が熟練作業者の目視に頼って行われているのが実情です。
そうしたプロセスにAIが導入され、人間による目視検査の負荷を劇的に軽減しようとしているのです。正常や不良のサンプル(教師データ)となる製品の画像を機械学習に投入して推論モデルを作成。さらに、製造ラインを次々に流れてくる製品の画像とその推論モデルを突き合わせることで、リアルタイムに近い速度で正常か不良かの判断を行います。
上記のように「画像解析×AI」の組み合わせは多く、製造業における商品の解析だけでなく、道路や橋梁などのインフラなどの劣化や損傷診断への業務への活用も始まっており、提供企業も増えています。またそれを、さらなる省人化のためにドローンによって撮影した画像を用いて実際に行う例もあります。
また、オフィス業務の分野ではRPA(Robotic Process Automation)とAIを組み合わせた連携ソリューションが実用化されつつあります。RPAは定型的で反復的な作業(ルーティンワーク)を自動化することでは絶大な効果を発揮しますが、想定と異なる作業にはまったく融通がきません。そこにAIを適用し、その場面で必要なルールや学習モデルを参照させることで、人間と同様の判断を自動的に行わせるのです。
たとえばWebページの指定された項目から読み取ったデータをもとに異常を判断したり、数値レベルに応じて違った相手にメール送信したりする。あるいは画面に映った画像を判断し、その製品名を自動入力するといった処理が可能となります。
このように目的や判断基準を明確に示すことができる業務はAIと非常に相性がよく、比較的スムーズに活用を実現することができます。
ハードルの下がった今がAIに踏み出すチャンス
AIを活用するためのITインフラを安価なコストで導入できるようになったことも、一般企業のチャンスを拡大しています。
先に「AIは育て方が重要」と述べましたが、具体的には膨大なデータに対して機械学習やディープラーニングのアルゴリズムを適用する必要があり、ここには非常に高性能なコンピューティングのパワーが要求されます。実際、少し前まで機械学習やディープラーニングの研究開発は、スーパーコンピューターなどの専用機を使って行われていました。一般的な企業がそのような巨額のIT投資を行うことはほぼ不可能です。
この状況を一変させ、AIに対するハードルを大幅に引き下げる画期的なソリューションが登場してきたのです。汎用的なAIサーバーに搭載されたグラフィック・アクセラレーターを用いて並列演算を行う、いわゆるGPGPU(General Purpose Graphics Processing Unit)の仕組みにより、機械学習やディープラーニングを高速実行するというものです。これなら一般企業でも導入はそれほど困難ではありません。
最近では、このGPGPUのパワーをクラウドのIaaS(Infrastructure as a Service)から必要なときに、必要な分だけ調達することも可能となっています。さらに同じクラウドからは、機械学習やコグニティブ(認知)の豊富な機能がPaaS(Platform as a Service)として提供されています。要するにクラウド上のさまざまなサービスを組み合わせるだけで、AIを活用したシステムを比較的簡単に構築できる時代となりました。
もちろん、オンプレミスの環境としても、規模を問わなければ、さまざまなメーカーから、BTOでディープラーニング用のマシンを用意することもできます。今では企業規模を問わずにAI開発にチャレンジできる環境が整い始めているのです。
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2018-11-27
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