《連載:第2回》 攻めの企業経営に欠かせない、サブスクリプションモデル
前回の記事では、エコシステム化が進むITサービスの発展について見てきました。エコシステムやクラウドとともに近年広まってきた「サブスクリプションモデル」についても、その重要性に触れておく必要があります。
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サブスクリプションモデルが企業にもたらすメリット
現在、クラウド上に巨大なITのエコシステムが形成され、それが企業同士の協業やビジネス創出を促進しています。このようなエコシステムを利用する企業の最大のメリットは、必要なITサービスをサブスクリプションモデルで調達できることにあります。
これまで企業がさまざまなソフトウェアを導入する場合、利用環境(サーバ台数やCPUコア数など)やユーザー数などに応じたライセンス(使用権)を購入する必要がありました。通常この料金は前払いとなります。ただ、前払いといってもそのソフトウェアを未来永劫にわたって使い続けられるわけではありません。毎年20~30%程度のメンテナンス料がかかるのが一般的で、さらにEOS(サポート終了)を迎えてソフトウェアをアップグレードする場合は新たなライセンス契約を結ばなくてはなりません。
サブスクリプションモデルは、こうしたソフトウェア利用のハードルを払拭します。必要なソフトウェアを、必要なときに、利用した分だけ料金を支払えばよいのです。前払いの義務はなく、利用をやめれば以降の料金はかかりません。
もっとも、従来からの基幹業務システムに代表される「SoR(Systems of Record)」や「モード1」と呼ばれるシステムは、定型的な業務を効率的に処理することを目的として、長期間にわたって運用形態の変更も少ないため、従来どおりライセンスを前払いで購入して減価償却したほうが、結局はコスト的にも得策となる場合もあります。
問題となるのは、AIやIoT、あるいはデジタルマーケティングなどの最新テクノロジーを活用し、自社の競争力強化や新規ビジネスの創出を実現する「SoE(Systems of Engagement)」や「モード2」と呼ばれるタイプのITシステムです。こうした攻めのシステムは、失敗するリスクを抱える一方で、成功した場合は迅速にリソースを追加して利用範囲を拡大していかなければなりません。また、いったん導入したテクノロジーに固執するのではなく、その時々のトレンドを監視しながら柔軟にテクノロジーの乗り換えを検討していく必要があります。こうした変化への対応は従来のライセンスモデルでは不可能です。
企業が継続的なイノベーションを成し遂げていくために、サブスクリプションモデルに基づいたITサービスの活用が今後の“基本形”となります。
エコシステムを利用してユーザーもビジネスを拡大
最後に少し目線を変えた、エコシステムの利用法を紹介しておきたいと思います。エコシステムを通じて多様なITサービスを提供するのは、なにもITベンダーだけに許された専売特許ではありません。クラウド上のエコシステムに、自らプレーヤーとして参入するユーザー企業も登場しているのです。
たとえば三菱UFJフィナンシャル・グループのFinTech子会社であるジャパン・デジタル・デザイン(JDD)は中国SNSの最大手であるテンセントと提携し、微信(ウィーチャット)内で動画投稿のサービスを始めると発表しました。訪日中国人が同SNSにアップする動画を分析することで、彼らの潜在需要を見極め、訪日リピーター獲得に向けたさまざまなサービスを開発したり、日本の地方を活性化したりすることを目的とするものです。
このようにITリソースのクラウドからの迅速な調達、API連携によって他サービスとの連携を容易に可能にする仕組みは、サービス利用者の拡大だけでなく、サービス提供者の拡大にも影響を与えます。自社の持つアイデアやノウハウなどの強みをITサービス化し、エコシステムを通じて提供することで、これまでにない収益を得ることが可能となります。
そして繰り返しになりますが、そうしたサービスを利用する側としても、サブスクリプションモデルのために、IT投資リスクのハードルが大きく下がっています。ユーザー企業もサービス事業者も、成長を続けていくには、これまで採用していたやり方にとらわれず、エコシステムで生み出されていく新たなものをいかに利用していくかに目を向け、新たな市場の動きを常に注視していく必要があるでしょう。
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2018-09-25
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